薬剤でのシロアリ予防はあり得ない。最高の予防は目視!

薬剤でのシロアリ予防はあり得ない。最高の予防は目視!

昨年(2012年)、NHKでアメリカ・カンザイ・シロアリの日本上陸を懸念するレポート番組が放送された。

日本で一般的なヤマト・シロアリの繁殖には、多くの水分を必要とするが、アメリカ・カンザイ・シロアリはある程度乾燥した環境でも生息できるというのが通説のようだ。(南方系のイエ・シロアリについては長くなりますので、またの機会に書かせて頂きます)

そういった点で、アメリカ・カンザイ・シロアリはどんな環境にも対応する怖い生物のように宣伝され、一般消費者に過剰に対処の必要性を呼び掛ける住宅ビルダーが多く存在する。

でも、その多くがシロアリの勉強もせずに、ただ消費者の恐怖心理を煽って仕事をしているという感じは否めない。

まずは、シロアリの予防・駆除剤についておさらいしておきたいと思う。現在防蟻・防虫処理で主流なのは、非有機リン系で蒸発値の低い「ネオニコチノイド系」であると思われる。(勿論、その他にもたくさんの薬剤が存在していますが・・・)

これらの薬剤は、自然の生態系に影響を与えるという観点からヨーロッパでは使用が禁止されている状況にある。この問題のトピックスとなったのが、ミツバチが激減した原因の一つとされていることだ。

ただ、これが原因の一つかも知れないということで禁止したからといって、ミツバチの問題が解決されていないことを考えると、全ての罪を被せてしまうのは危険でもある。天敵の増加や生殖機能の減衰、動植物の生態バランスの変化などを、薬剤一つの問題で片付けることは難しいと思う。

次に、最近よく使われるようになってきたのが、ホウ酸塩系の薬剤(ボロン)である。これは、腎臓を持つ生物が過剰に摂取しても自然に排出する。だから、人間やペットには安全であるというものだ。だが、これを主張する人々は、シロアリ以外の生物にとって安全かどうかを考えていないことも問題だ。

シロアリのような下等生物(高等、下等というのは、勝手に人間が言っているだけですが)は、ホウ酸塩を過剰摂取することで細胞レベルでエネルギー代謝できなくなって餓死することが分かっている。代謝という生命の基本プロセスに作用するので、進化しない限りシロアリが免疫を獲得することはまずない。

だから、シロアリにはホウ酸塩が有効であるというのだが、ネオニコチノイド系薬剤にしろ、ホウ酸塩系薬剤にしろ、殆どが木材の表面に塗るだけであって、木材の中まで薬剤を浸透させるという加圧処理を施してはいない。(土台のみ、薬剤が加圧注入されたCCA材が使われることが多い)

写真は、ネオニコチノイド系薬剤を塗布した1階の壁の柱材をヤマト・シロアリが食害した様子だが、表面処理だけではすぐに突破されて、木材の中に簡単に侵入できることがこの写真でよく分かる。シロアリは毒を食べて死ぬのだが、次から次に生まれてくるし、害があろうがなかろうが、かじられるものをどんどん食べ続けるのが、彼らのDNAに刷り込まれた本能なのだ。

ホウ酸塩系薬剤の効果は、シロアリが薬剤の付いた木材を一旦食べて、それを排出できずに死ぬことを前提にしているのだから、ホウ酸塩系薬剤を塗布すれば食べられないというのは、妄想だと誰でも理解できるはずである。(食べ物が周りにない場合、死ぬから食べないという知能も持ち合わせていない)

また、アメリカ・カンザイ・シロアリには、ホウ酸塩系薬剤が効いたというレポートがアメリカで報告されているが、実験自体が自然の状態で行われていないという点で疑問が残る。

シロアリは、コロニーと呼ばれる蟻道空間を含めて生物として生息していると言えるのだが、シロアリ単体をそこから取り出してしまったり、コロニーの一部となった木材を切り出したりして、実験が行われているのが実情だ。その状態では、シロアリは混乱した異常な環境にあり正常な行動が取れないという点で、自然に存在する安定的なシロアリと行動が異なると考えるのが、正しいと思われる。

あと、気になるのは、先にも述べたように安全と言われるホウ酸塩系薬剤を塗布した構造材が一般化した場合、その家屋が解体・廃棄された時にシロアリ以外の虫や下等生物の生息にも大きな影響を与えないかという点である。シロアリは、本来枯れた木を土に戻すという役割を自然界で担っている訳だが、防蟻処理された材木が大量に廃棄されることで、シロアリが自然界で絶滅に追い込まれること自体を危惧すべきである。

先にも述べたように、腎臓を持たないあらゆる昆虫も、体内にホウ酸が入ると、代謝に必要な物質(補酵素)と結合する事で代謝がストップし、結果細胞そのものが餓死してしまうことも忘れてはならない。また、その効果は消えず、水によっても自然界に溶け出すのである。(雨に濡れることを前提に建築する2x4工法等の木造住宅では、雨でホウ酸塩が土壌に流れ出してその効果が薄まる)

まさに、ミツバチの二の舞になりかねないのだ。自然界には、不必要な生物などいないのであるが、人間のエゴで害虫にされている昆虫が、如何に生態系で重要な役割を果たしているかを理解すべきである。

私たちも薄いホウ酸を塗布したセルロースの断熱材を使うが、それは予防を目的としているのではなく、万一食害に遭った場合の進行を緩和・抑制することを目的としている。また、ホウ酸の難燃性を利用して、万一の火災被害の抑制効果も期待している。だが、度を越した使用や間違った宣伝は、いいことではない。正しい知識と節度ある利用が必要なのだ。セルロースの断熱材は外装後に施工されるので、雨に濡れることはないし、家が解体されてもリユースが可能なのだ。だから、必要以上に自然界に流出・廃棄されることもないのである。

ホウ酸は、自然界に存在する。しかし、産出する地域は小さく限られており、ゴキブリ駆除のホウ酸団子程度の使用なら広く環境に影響を与えることはない。だが、自然に存在するものは、全て安全だというのは正しくない。建物に使われて広範囲に被害をもたらしたあのアスベスト(石綿)も、ローマ時代から使われている自然素材なのだ。

不勉強で中途半端な知識しか持たない住宅メーカーや工務店が、なんと日本には多いことか。彼らが盲信を世間に流布するのは、非常に危険としか言いようがない。何ら調査もしないで予言を信じたり、マヤ暦の終末説で世間を煽る人たちと、どこに違いがあるでしょうか。

シロアリは、非常に弱い生き物なのである。蟻道をちょっと壊されてしまうだけで、それ以上先には移動できない生物だということを覚えておいて欲しい。

だから、家の基礎まわりを1週間に1回見て回り、蟻道が基礎に上がってきていないか確認すればそれでOKなのだ。勿論、半年か1年に1度は床下も覗いてみると更に安心だ。奈良法隆寺の木造建造物が千年建っていることは、蟻道さえなければ、薬剤を使わなくてもシロアリの被害には遭わないという証拠である。

もし基礎や床下に土で出来た細い道が不自然に上に延びていたら、それが蟻道であり、それを指で壊してしまえば、建物には侵入しないのである。

建物の床下が心配であれば、ベタ基礎にして土の中のコロニーと床下とを隔絶しておけば、いくら基礎の下にコロニーがあっても問題とはならない。(床下を持たないようなスラブ床の建物は、シロアリに対してリスクが大きいということでもある)

また、基礎の表面に発泡性の断熱材パネルを張る工法があるが、基礎とこのパネルとの間にシロアリが蟻道を作る場合、人間が目視出来ない状況が生ずることとなるから、これもリスクが大きいと考えるべきだろう。明るさが苦手なシロアリは、断熱パネルの表面には決して出てこないのだ。だから、外断熱工法で外装材と建物構造との間に発泡断熱パネルを施工することもリスクがあることを覚えておくべきだ。

シロアリは、柔らかな発泡性断熱材を簡単に食べてしまう。勿論、食べても栄養にはならないのだが、進化的に下等なシロアリはそんなことは分からないし、食べやすいからその侵入速度は普段より早くなるのである。

彼らは、食物ではない断熱材をも食べることから、お読みの皆さんも薬剤の塗布された木材が食べられることを容易に想像し得るはずである。

そして、日本に輸入される北米産の構造材の多くは、チャンバー内で高温乾燥されたKD材であるということを知っておく必要があるだろう。生物的に弱いアメリカ・カンザイ・シロアリが材木内にいたとしても、長時間高温状態の中にいれば死滅してしまうのだ。こうすれば、薬剤を用いる必要もないし、安全に駆除できるのです。

よって、2x4工法の輸入住宅に使う構造材に紛れて、アメリカ・カンザイ・シロアリが侵入することは全くあり得ない。古い木製家具を購入した消費者や価格の安い無乾燥のグリーン材を使う工務店だけが、そのリスクを心配する必要があるのかも知れないが・・・。

また、アメリカ・カンザイ・シロアリが日本国内で生息拠点を確保し、それを広げているという話を私は聞かない。つまり、マスコミや住宅メーカーがその危険を消費者に訴えているだけで、実態性に乏しいということも付け加えておきたい。彼らの多くは、私同様実際に自然界で繁殖している様子すら見たことがないでしょう。もし私の話に疑問を感じるなら、そう言ったビルダーに詳しく質問してみて下さい。(将来、そうなる危険まで否定はしませんが・・・)

上記を納得頂いた賢明な皆さんには、シロアリの生態をちゃんと理解し、シロアリを正しく怖がることが、最大の予防であるとお分かり頂けるはずである。

自然にシロアリが嫌がるヒノキやヒバを土台に使ったり、シロアリが侵入しにくいベタ基礎を施工したり、素材や構造を工夫をすることでのシロアリ対策は可能です。安全な環境でシロアリとも共存していく寛容さが、私たちには必要ではないでしょうか。

こうした私たちの考えや建築に共感され、施工を希望される方は、ご相談下さい。

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