ムク材の自然な割れは、当たり前

ムク材の自然な割れは、当たり前

2010年の日経ホームビルダーの記事で、「ムク材の割れをどう考えるか?」という特集記事があった。

私たちが輸入住宅で扱うSPF(スプルース・パイン・ファー)の構造材も当然の如く無垢材な訳だが、自然な材木は自然と割れが入るのが普通なのだ。古い木造の寺社へ行っても、その割れはどこかかしかに存在しているのが見て取れる。

その特集記事で、森林総合研究所加工技術研究領域長の黒田尚宏さんという方が登場して、「ひどい内部割れを見つけたら返品すること。但し、昔ながらの天然乾燥ではムク材の表面割れを防ぐのは難しく、かつてはムク材に表面割れが生じていることは普通だった」と話す。

また、最近行われている人工乾燥の高温セット法で乾燥スケジュールをきちんと守った場合でも、内部割れを完全になくすのは難しいようだ。(私たちが使うSPFは、カナダで人工乾燥されてきます)

そして、施工当初は割れが見えない状態でも、時間が経つにつれて割れが自然と顕在化してくることも多いのである。つまり、人間の力では何ともならないのだ。

割れによる強度低下は気になるが、「これまでの実験結果では、表面割れも内部割れも、極端でなければ強度に無関係だ」(黒田さん)という。

割れを防ぐ方法として、わざと切れ込みを入れて、割れを作る「背割れ」という方法を昔の大工は取ったのだが、それは強度の保全というよりも、木材の化粧側が割れて美しさが損なわれるのを防ぐ為に、別の側に割れを入れたという意味合いが強かったと思われる。

特集記事にコメントを寄せている方の言う通り、現状は住宅メーカーや消費者が極端に割れを悪者扱いした結果であり、スーパーで規格に合わない大きさや傷のある野菜を排除するという間違った商習慣が、日本に蔓延したのと同じ状況である気がする。

割れをクレーム扱いするなら、無垢材に代えて接着剤を使った集成材を使わざるを得ない。それでも、接着面の剥離のリスクを完全には排除出来ないのである。勿論、耐震性能を上げる為に使う構造用合板も接着剤で強度を出している訳だから、同様のリスクが存在するが、出来るだけ自然の素材で家づくりをしたいという理想は、私たちを無垢材へと向かわせるのである。

(集成材や構造用合板の剥離についても、部分的な(限定的な)ものであれば、大きな問題にはならないので、こちらも極端に恐れる必要はないです。ただ、無垢材のように繊維が連続したところに割れが入るというのではありません。集成材は、繊維の連続性がないものを接着剤で繋ぎ合わせたものですから、割れが直線的に入ってしまい、将来的に一部が剥がれ落ちる可能性はありますね。構造用合板は、たくさんの釘で壁や床に留められていますので、剥離による脱落はないと考えていいでしょう。

また、集成材は集められた木の向きがバラバラな為、一般的に無垢材よりも高い強度を発揮すると言われています。私たちもその強度を利用して、大きな開口部の梁(ハリ)材として利用します。長所を利用しながら、短所を如何にカバーしていくかを考えるのが、プロの仕事です。その剥離のリスクを釘やボルト、構造的に固定する仕組みで回避するなど、使い方次第で集成材の部分利用も活きてくるはずです)

皆さんは、工業化された集成材や鉄骨だけで家を建てたいですか、それとも出来るだけ無垢材を使って自然に近い家を建てたいでしょうか。それは、皆さんが何を優先するか、ものの長所・短所をどのように評価するかで決まります。尚、この記事は、半田市K邸の現場にお連れしたお客様から頂いたご質問への回答を、もう少し詳しく述べさせて頂く為に掲載しました。

こうした私たちの考えや建築に共感され、施工を希望される方は、ご相談下さい。

集成材を使った土台についての記事:危険な防蟻処理剤は、使わない! (2007年4月30日)

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